ニュートラルとは?ということについて、
どういう状態のことなのかと質問をいただくことがあります。
ニュートラルに落ち着く、という状態から物事を眺めるようになると、
それまでの景色とは一変した世界を眺めるような感覚になられます。
大人でもない、子どもでもない、妻としてでもない、誰かの親でもなく、
娘でもない、ただの自分自身にある、その感覚から世界を眺める時、どのような世界が広がっているでしょう?
ニュートラルに物事を見るのは、物事の良い部分だけにフォーカスをしよう、という
種類のものとは全く異なる視点です。
健康な人にとって、物事の良い部分のみをみましょう、というのは
ある一定の効果があるのに対して、ある種の葛藤や脅威を抱えた人たちには、
そう簡単に効果を期待できるものではないのです。
もちろん、どんな時でも「物事の良いところを見ようとする」ことは大切なことではあります。
でも、自分で選択して「物事の悪い面」「脅威」「暗い面」をみてしまうパターンを持つ人にとって、
物事の良い面をみる、というのは「頭では理解」していても、そう簡単にできることではないのです。
そういう方は、どうにかして普通の人のように振る舞いたいと頑張っているかも知れません。
それが故に、おかしな行動をしているように映ることもあるでしょう。
そういう時に必要なのは、その人に対して、必要なことは、
善意からであっても、アドバイスや解決策を提供することではないのです。
彼らは長い年月をかけて、神経系が脅威を注意深く察知するようになっています。
なので、こうしたほうがいいのではないですか?という促しがあったとしても
(彼らが望んで相談を持ちかけてきたとしても)頭では理解していても、
それを実行することが難しいのです。
むしろ、自分の考えることと周囲との関係に循環が起こらず、うまくいっていない場合、
自罰的になっているとしたら、せっかくのアドバイスも逆効果になることが多いのです。
力になりたくても、周囲にいる人がどうにもできないことも多々あります。
ですので、神経系にポジティブなルートをつくることから始めると良いと考えています。
プラクティショナーとして関わっていく際には、夜寝る前に
3つのいいことを書き出すようにお伝えすることがあります。
それも難しいと言われることがありますが、ほんの些細なことでも十分な効果があるものです。
または、すでにウォーキングなどをされている場合には、それらが神経系にとって
どのようないい働きをしてくれているのかを伝え、取り組んでいらっしゃることについて労う事も多いです。
相談を受けた際に大切なことは、
その方自身がすでに取り組まれている事であり、そこに価値を置く事なのです。
それは、神経系の安定を図るためにすでにできていることという認識を持つことが大切で、
(無意識に取り組んでいることがあるものなので)その気づきが得られるような理解と温かな声かけをすることです。
これにはポジティブ心理学的な意味があり、その方自身がすでにご自身にとって
必要なことに取り組んでいる、十分である、そのことだけを伝えることが目的になります。
*ポジティブ心理学とは、いわゆる「ポジティブシンキング」とは異なる学術的研究として確立されたものです。
問題を解決することができるのは、いつでもその人自身です。
他の誰にも、その人の人生を担うことはできません。
誰かの人生を自分ごととして担う癖がある人にも、そうなるが故の理由があるのです。
ニュートラルな視点にたつとき、その確信が見え始めます。
本当の問題は、解決するに値しないほど何もないことに
気がついていくでしょう。
そして、そのことにとらわれないようにもなっていきます。
それは自然に起こることです。
そうやってまた安堵して、楽に自分の人生を安心して歩んでいくようになります。
ニュートラルな状態にある感覚をまずは知り、それに馴染んでゆくこと。
そしてそこからどんな変化がやってくるのかを静かに眺めていくこと。
そのプロセスを迎えていくことをただ、許していくこと。
全ては私たち自身の内側に起こることです。
そして、外側の世界がさらに広がりを持つようになります。
私たちの人生はいつも自分で創造していくしかないものだから、
そのベースとなる神経系のバランスを整えることが何よりも大切な鍵になるのです。